加計学園の「新設獣医学部」とは

前川前次官が「文書は本物だ」とすっぱ抜いたのは天下り問題で詰め腹を切らされた腹いせだろうけど、「規制緩和」を安倍さんががんばって進めたら安倍さんの友達が得しちゃった♡というのはでき過ぎに思える。「何かある」と思うのが普通でしょう。

高橋洋一や岸博之ら規制緩和論者が政権擁護に走っているが、この人たち何か見返りでもあるのかしら。政府委員にでもまたなりたいのか知らんけど、なんの見返りもなしに安倍さんの味方をしているとしたら、それこそ経済学に反するというものだ。人間自分に何のメリットもなしに行動するわけがない、というのが経済学的人間観ですよね。

規制改革を安倍総理や菅官房長官が推し進めて、それで文科省に圧力をかけた。それなら産経読売の言うようにまだ政策の範囲内だとまだ言えるかしれないが、その結果「総理のご親友」が運良く宝くじに当たってしまう、というのは疑惑の元だろう。何にもないというなら積極的に証人喚問でも何でもして晴らせばいい。御用学者(になりたい人たち)の出る幕などないのである。

そもそも「獣医学部の新設」とはなんなのか? これがはっきりしなければ本質の論じようがない。

「獣医師」。ペットでも飼っていない限りお目にかかることのない人たちだが、この獣医師が足りているのか足りていないのか。日本獣医師会は以前から獣医学部新設には反対で、「獣医師の数は足りており、問題なのは獣医師が偏在していること」というスタンスだ。

実際そうで、獣医学部を出て獣医師資格を取っても、多くは都会で動物獣医師、つまりペットを相手にする犬猫病院になってしまう。この犬猫医師は最近ダブり気味で、東京・大阪など大都市圏ならそこら中に犬猫病院がある。滋賀のような田舎でも「○○動物病院」とか「○○アニマルクリニック」なんて看板割とよく目にするんですよね。

実際に足りないのは家畜を診療したり輸入動物の検疫をしたりする公務員獣医師だが、激務で田舎暮らしが基本なので、なり手がいない。

獣医学部は、国公立・私立も含めて北海道・東北・九州に偏っている。これも考えてみれば当然で、畜産の盛んな地域は北海道・東北・九州だからだ。農水省のサイトなんかで家畜の飼育頭数を見ると、見事に上記三地域に偏っている。

考えてみれは、東京や大阪には牧場はほとんどないので、東大や大阪府立大に獣医学科なんかいらなくてもいいぐらいだ。その点、鳥取大や山口大も中国山地では肉牛の飼育なんかしたりする(大山乳業とかありますね)。だったら加計学園が本拠とする岡山に私立の獣医学部をつくってもよさそうだが、中国地方の畜産は北海道や九州に比べると小規模だし、すでに国立が二つもあるので、岡山はダメだとはねられたのだ。

じゃあ四国ならどうなのかというと、四国もそれほど畜産業は盛んではない。せいぜい愛媛で養豚が盛んなぐらいだ(愛媛県人は豚をよく食べるんでしょうか?)。それでも豚さんたちを診てあげる必要があるから、愛媛なら「特区」ということで、新設可としたんでしょうかね。

とはいえ、愛媛でも今治なんかド田舎だ。タオルぐらいしか思いつかない人が大半だろう。四国自体が「陸の孤島」と呼ばれており、愛媛の人間からすると高知へ行くより大阪に出る方が早いという。こんな地域で、どれだけ卒業生が四国の獣医師として「根付く」かというと、やはり疑問はありますね。

『バンキシャ!』でもやっていたが、同じ加計学園が経営する銚子の「千葉科学大学」。岡山理科大と同じく偏差値40台のFランで、学生はそこそこ集まっているようなのだが、卒業生の大半は東京圏に就職するという。この大学に投資した銚子市には莫大な借金だけが残ったみたい…というお寒いレポートだったが、今治がこうならないという保証は確かにないですね。

「それでもいいんだ、今治が財政破綻するならすればいい、獣医師が過剰になって食えない獣医師が出ても自己責任」というのも、それならそれで規制緩和論のスタンスなのだろう。加計学園は儲かるだけで、痛くもかゆくもない。160人という巨大な定員を掲げて、将来食えなくなる学生たちが集まるだけである。

だいたいおかしいのは、「加計学園だけになったのは族議員の抵抗があったから」という高橋洋一の言い分。それなら「官邸に押し切られた」と主張する前川前次官と同じで、当事者同士が「相手に負けた…」と言ってることになる。岩盤規制の突破が重要課題だというなら、加計だけでなく京産大にも獣医を認めてやればいいだけの話。

「農水省の族議員に押し切られた」というのは、前川前次官と同じく無能の言い訳に過ぎない。そもそも「反対した族議員」とは誰なのか。反対した奴が誰だろうと、安倍一強の現在、押し切ればいいだけの話である。

それが去年12月の間際になって、後出しジャンケンで京産大は「近くに大阪府立大があるからダメ」と蹴飛ばされた。来年京産大が獣医学部新設にチャレンジしたら、「獣医師が足りない!」と言って獣医市場に飛び込んだ加計学園も、競争相手の参入にもろ手を挙げて賛成するのだろうか。しなければ加計学園というこの胡散臭い学校屋は大ウソツキということになるだろう。

どう考えても解せない話で、「結局コネなんじゃないのか」と思われても仕方がない。というか、所詮は日本も韓国中国と同じで、世界に冠たる「コネ社会」なのだろう。そうでないなら、安倍官邸と取り巻きの三流御用学者たちは、今度は京産大の獣医学部実現に向けてぜひとも奮闘してもらいたいものである。

〈追記〉

加計学園に獣医OKを出したとかいう「国家戦略特区諮問会議」の委員たちが「私たちはちゃんとやったんだあ!」と記者会見までしているが、そもそも疑問なんですが、新設学部の認可はこのなんたら諮問会議というところが決めてるんですかね?

自民党マンセーの思考停止新聞・産経新聞が盛んにこの「諮問会議」を取り上げてあげているが、首相官邸のウェブで調べてみると、内閣総理大臣はこの国家戦略特区諮問会議の「意見を聴いて」国家戦略特区基本計画や区域計画を決めるとある。法律のことは詳しくないが、これは国家戦略特別区域法という法律に規定されている。

そもそも「諮問会議」の「諮問」って、諮り問うということで、上の者が下の者に「どうしたもんだろうか?」と意見を求めることですよね。君はどう思う?と聞いているだけのことで、単に参考意見を聴いているだけ。別に部下から意見が出たからと言って、上司がそれに拘束されるわけでもない。「君はこう言うけどやっぱりこうする」と言ってもいいわけで、それが日常どこの会社でも役所でもやっていることでしょう。

それとも、この国家戦略…法にいうところの「意見を聴いて」には、拘束力があると解釈されているのか。そういう専門家というか法律家の意見をそれこそ聞いてみたいのだが、テレビのタレント弁護士たちはまるで何も言いませんね。もぐりじゃないだろうし。

どうも安倍さんという人は、やっぱり頭良くないのでは…?と思うことが多々あるが、私には何の決定権限もないんだと国会で言い切ってしまうところ、どうなってるんでしょうか。国家戦略何とか法には、「内閣総理大臣が諮問会議の意見を聴いて決定する」とあるのだが、当の総理本人が知らんというのだから、じゃ誰が決めたの?となる。素朴な疑問でしょう。

岩盤規制突破、まあ結構ですね。バンキシャでどこぞのコメンテーターが「岩盤規制の突破が大事ですよ」と援護射撃をしたころから、総理も官房長官もやたらとこの言葉を使い出した。テレビを見たんだか裏でつるんでるんだか…

それはさておき、獣医学部の設置なんか届け出制にすればいいんじゃないかと個人的には思うのだが、規制の突破というならやっぱり京産大にもOKを出すべきで、獣医学会の反対があったからとか何とか安倍さんは答弁しているが、当の獣医学会は「新設は1校にしろと言ったが加計にしろとは言ってない」と反論コメントを出す始末で、かつての民主党政権並みに政権運営がゴタゴタしている。

頭の悪さでは安倍さんも野田前首相もいい勝負では。まあ、早稲田の方が成城大なんかよりずっと偏差値上ですが。ともかく変な話ですよ。

〈追記②〉

予想通りというか、2016年11月9日に国家戦略諮問会議の「広域的にほかに獣医学部がない場合に限り」で京産大を断念させたあの決定内容、不思議なことにその前日8日に内閣府からすでに今治市に伝えられていたことが分かった。内閣府は「不適切なことだった」と「反省」しているそうだが、そんなもんで済むわけがないでしょう。これが疑惑の核心ですよ。

国家戦略諮問会議なんかただのお飾りで、「広域的」云々の決定内容はその前日にはすでに内閣府が決めていたのだ。そして今治市に「明日の会議でこう決まります」とあらかじめ伝えていたわけで、実際に決めていたのは内閣府だったことが明らかになった。これで会議の委員だという竹中平蔵の正体もバレたというものですよ。

規制改革と言いながら実際はコネのある連中に有利な規制をする。これが規制緩和論者の正体というわけ。ここまでわかっていながら、国会閉会でマスコミの追及もうやむやになり、「幕引き」となるのだから。

「広域的」という文言を考え出したのは萩生田だ。この内閣官房副長官で千葉科学大学客員教授、加計孝太郎と安倍総理といっしょにバーベキューを食う仲というヤクザまがいの男は、ウソをついている。それはあまりにも明らかだが、与党もマスコミもそれがわかっていながら知らぬふりをしてあげるのだから、北朝鮮や中国とたいして違わないですね。

自民党応援団の「正義のミカタ」も黙ってあげているが、この「政府に都合の悪いことはあえて取り上げない」という姿勢、この翼賛番組が毎週こけおろしている朝鮮中央放送と寸分たりとも違わない。これほどまでに安倍政権は強大な権力を持つようになったんですねえ。

憲法改正を言っているとそれが「錦の御旗」になるのか、読売産経、そしてこういう右派番組はすべて翼賛化で、安倍政権が何をやろうと盲従する。ここまでくると安倍天皇という感じですね。ナショナリズムを振りかざすとすべてが許されるというんでしょうか。それなら習近平の反日教育と変わらんがな。

かつて民主党政権時代に突っぱねられた岡山理科大の獣医学部新設が、安倍政権ではどんな「無理」でもなんでも通ってしまうのだから、政権の「強さ」は段違いだ。内閣支持率が5割前後でこの強さだから、やっぱり憲法改正とかタカ派というのも大きいんでしょうね。右派政権だと支持率50%で「天皇並み」の強さになれるということでしょう。

憲法改正とかの是非はさておき、コネで無能なやつらに恩恵をめぐんでやるのは「悪」というものだ。安倍政権も右派マスコミも、結局のところ自由競争主義者ではない、ということですよ。

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