安倍政権はそもそも規制緩和に熱心といえるのか?

加計学園問題でラウンドがこっちに移ってきた感があるけど、今は懐かしい感じもする「規制緩和」論。これが与党側のタレント学者たちから出てきて、加計問題はぐちゃぐちゃになってしまった。

安倍政権は第1次政権、第2次政権とも規制緩和の推進を政策として掲げている。しかし第1次政権では、郵政民営化に反対した議員(野田聖子ら)を復党させるなど、必ずしも規制改革一辺倒ではない姿勢も見せていた。

第2次政権で打ち出した「アベノミクス」と自称する経済政策だが、目玉の「三本の矢」のうち、第三の矢の成長戦略については、経団連のように「様々な分野で規制緩和を推進したが、多くが道半ばであることも事実」という評価から、共産党のように「新自由主義的改革で規制緩和を推し進めている」という評価まで分かれている。

安倍政権下では、たとえば農業法人への非農業者の出資上限を引き上げたり、民泊を経済特区では短期滞在にも広げたりはしているが、出資上限は50%にとどまっているし、民泊も全国展開はしていない。生乳の流通緩和も進められたが、いまだに農協系の指定団体が流通の大半を握っているのが実情だ。

金融分野でも、かつて小泉政権は政府系金融機関を民営化して商工中金や日本政策金融公庫を設立させた。これらの金融機関には、官僚OBの天下りは設立後しばらくなかったが、旧民主党政権下で完全民営化が先送りされ事実上棚上げにされた。さらに安倍政権になると、経産省などから官僚が天下りしてトップに就く例が相次いでいる。

民営化もたいして進展していない。NHKの民営化が典型で、これも小泉政権時に一度検討されかけたけど、それっきりになっている。安倍政権ではJAの解体にすら手を焼いている状態だし、閣議決定した水道法改正案でも、これは自治体の財政負担を削減するのが主目的で、経済効果となるとはっきりしない。

つまるところ、安倍政権の規制緩和に対するスタンスは、「各分野で少しずつ進めてはいるが、小泉改革ほど徹底していない」というのが実情だろう。

獣医学部の新設でもその中途半端さが表れている。「石破4条件」に「広域的に…」云々の文言を付け加えてわざわざ規制を強化している。内閣府は、なぜ4条件に即して申請を検討しなかったのか。今になって「第4の条件は定性的なものでいい」と言い出しても後の祭りである。

安倍政権には竹中平蔵のような小泉政権時代の規制緩和論者も参画しており、一校でも獣医学部が新設されるなら、規制緩和は進んでいると言えるかもしれない。問題は、「その一校がなぜ加計学園なのか」であり、規制緩和の是非ではない。しかし反安部派・安倍擁護派の双方が規制緩和の是非を議論しようとしており、そのため互いの主張とも的外れになっている。

安倍政権がその支柱とするいわゆる右派勢力も、規制緩和に関しては一枚岩ではない。かつて郵政選挙で自民党を離れたいわゆる「造反組」の議員たちには、平沼赳夫や城内実、古屋圭司、衛藤晟一をはじめとして右派系の政治家が多い。

造反組でなくとも、たとえば森友問題で安倍擁護の熱弁をふるった西田昌司は、現憲法を「占領基本法」と呼び、教育勅語の活用や男系皇統の維持などを主張しているが、その一方で「構造改革の総点検」を唱え、新自由主義との決別を謳っている。TPPに関しても「売国的政策には断固反対」と留保をつけている。

安倍総理が畏服する岸信介からして、自由放任主義の信奉者ではなかった。岸は、北一輝に傾倒した過去があり、むしろ国家社会主義的な政策を唱えた。第2次安倍政権の「官製春闘」には、祖父の「国家による労働者の保護」という姿勢がみられる。安倍政権が、規制緩和を一応推進しながらも、小泉政権のような徹底がないのはこのためだろう。

なぜ、客観的には加計学園に有利になるような条件を付け加えて、結果的に加計学園にだけ新学部新設への道を切り開いたのか。獣医学部新設なんて日本経済全体からみればちっぽけな問題だろうけど、単に頼まれると断れない性格なのかな? この矛盾ともとれる態度は、確かに政治家としては命取りになりかねませんよねえ。

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